大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和56年(行コ)8号 判決 1981年6月16日

和歌山市黒田一二番地

控訴人

株式会社東洋精米機製作所

右代表者代表取締役

雑賀和男

右訴訟代理人弁護士

澤田脩

和歌山市湊通り北一丁目一番地

被控訴人

和歌山税務署長

宮崎英夫

右指定代理人

小林敬

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、当事者の求める判決

1  控訴人

原判決を取消す。

被控訴人が、控訴人の昭和五二年四月一日から昭和五三年三月三一日までの事業年度の法人税確定申告について、昭和五三年五月二九日付で控訴人に対してした申告期限延長申請却下の処分を取消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

主文と同旨

二、当事者の主張

次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人の主張)

1  控訴人の昭和四七年度分の「仮申告書」、昭和四八年度分の「確定申告書」と題する書面の提出が確定申告の意思でされたものでないことは、添付書及び前後の事情により明らかである。

2  本件の事業年度について決算をすることのできないことの責任は、無題ノートの所在を明らかにしない和歌山地方検察庁にあって、控訴人にはない。

3  控訴人は雑賀慶二との間でこれまでの債権債務関係について協議すべく準備中であって、この協議が整えば決算が可能となるから、原判決を取消されたい。

三、証拠

控訴人は甲九ないし一三号証を提出し、被控訴人がそれらの成立を確めたほかは、原判決証拠摘示のとおりであるから、これを引用する。

理由

一、当裁判所も、控訴人の法人税確定申告期限延長申請を却下した被控訴人の本件処分に瑕疵はなく、この取消を求める控訴人の請求は理由がないと判断するが、その理由は次に付加訂正するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決七枚目裏四行目の「損益計算をなし」の次に「て決算を確定し」と加える。

2  原判決八枚目裏三、四行目の間に次のとおり加える。

原本の存在及び成立に争いのない甲一ないし六号証、乙四号証、成立に争いのない乙六号証によれば、和歌山地方検察庁は控訴人に対し、昭和四八年七月ころ、その全部であるかどうかはともかくとして、それまでに作成してあった無題ノートの写真コピーを交付し、同年九月ころには右ノートの原本は所在不明であるがなお捜索中であると通知し、その後も同趣旨のことを伝えて来ていること、控訴人は昭和五一年までには前記差押を受けた帳簿書類について、無題ノートを除いては還付を受けるか、閲覧をするかをしたこと、無題ノートに控訴人主張のような財団法人雑賀研究所及び雑賀慶二との特許料支払等に関する取決めが記載されていたかどうかはともかくとして、それ以外には右ノートの記載中昭和五二年度分の損益の計算に必要なものはなかったこと、以上の事実が認められる。

3  控訴人は、雑賀慶二との間でこれまでの債権債務関係について協議すべく準備中であるから原判決を取消されたいと主張するが本件処分の適否は処分の時点で判断すべきものであるから、処分後三年近くなった現在の時点でそのような準備中であることは本件処分を違法とする原因になるものではない。

4  無題ノートに控訴人主張のような記載があったとしても、その差押及び行方不明通知ののち本件のように相当の期間が経過したときは、納税者は残余の資料でできる限りの決算をすべきものであって、右相当期間経過後は「やむを得ない理由により決算が確定しない」とすることはできない。もっとも一部の資料の利用をできないままで決算をするとすれば、その資料が利用できる場合に比して決算が不正確になる虞はあるが、このことは決算が誠実にされたものである限りは止むをえないものであって、そのような決算であっても決算をしないことを認めるよりははるかに望ましいとするのが、商法法人税法の趣旨と解することができる。そしてこのことは、無題ノートが国家機関である検察庁において保管中に行方不明となった場合でも異なるところはない。

二、そうすると、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥村正策 裁判官 広岡保 裁判官 井関正裕)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例